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"真宮はくっと笑うと「酷い店だ」とからかい混じりに言い返す。その有様は、男同士のじゃれ合いというより、親友のようにも見えたが、葉月と玲華は違う。

玲華はじっと葉月を睨んでいるし、葉月も火花を散ら  旅行社 ている。「天敵」なんて言葉はまだ遠いけれど、「女優・鈴菜玲華」に獅子になって食いつく覚悟。

「お邪魔したね」とまだ酔いが抜けない玲華は最後まで気丈な態度で立ち上がったが、足元が怪しい。

「――全く。柄ではないのだが」と真宮は玲華を抱き上げると、「それでは」と去って行った。
「おい、見事に王女さま抱きしてったぞ。あいつ」

「なんで気付かないのかな」「おまえ、そればかりだな。しかし、あいつら2年前から一度もセックスしてないって?真宮、病気にならないのか」

「それだけ、玲華が大切なのかもね。あたしは嫌です。ガンガン抱いて欲しいし!というわけで!」
「火曜日ですし?」獰猛な男女の視線がにやと絡んだ。


色んな恋があるだろうけど、わたし、葉月水晶の望む恋は、大鳥大河と紡ぐ恋だ。キスだって、セックスだって、指先が触れ合うだけだって、いつだって恋していられる。

「恋していいよ」その瞬間から、あたしの人生はプリズム色に輝き始めたんだよ。

辛かった過去は大河と出逢った記憶に変わるし、未来はきっと大河との――……
***

玲華の体重はあの時より軽い気がする。いや、僕が大きくなったのか。

「全く、貴方も葉月に似て来ましたよ。今度Cinderellaに行くときは、僕も一緒に行きます。何を打ち明けたんでしょうか」

玲華は無言で顔を背けた。
真宮は大河が送って来た音声ファイルを耳奥に甦らせる。


〝どうすれば、また抱いて貰えるのかな。あの真宮に会いたいのに〟


「……だから、僕は」

玲華の足に視線を注ぐ。母親の呪縛から逃げ出した綺麗な足だ。家族を捨てて、兄の援助も断って、玲華はどんな仕事でもこなした。

中には、「演じる人材がいない」死人役、ダーティーな役、バラエティの添え物、どんな端役だろうと、鈴菜玲華は演じ続けた。

キャナルを敵にした玲華は、究竟に堕ちた。世界公民 真宮はツテを辿って現在の事務所に移籍、玲華の違約金の裁判は終わっておらず、まだまだ戦いは続く。
その玲華を再び見初めたが、役を交代させた監督だったも面白い。その監督にはコンコンと弱味を探り出してやり、スキャンダルの種を並べ立て、しっかりと契約させたが運のツキ。元々玲華を気に入っていたらしく、子役の栄光を甦らせるような大役を回してくれた。


昨年には大型の香水会社との専属契約も出来たし、念願のプリマドンナモチーフのPRも手にしたところで、今回のKOSEIの秘匿「Cinderellaプロジェクト」いよいよ……だったが、大鳥大河と葉月水晶の双璧に阻まれた。

コンパニオンは葉月に決まり、玲華は次点。ドラマの根回しは亜貴と進めているが、なかなかに厳しい局面だ。

「まさか、化粧品会社の御曹司とは……それほど強いパイプはないでしょうね。もう一度、亜貴さんと人脈の練り直しをしなければ」

「違うわよ」玲華はおとなしく抱かれたまま、きっぱりと告げた。"
 

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